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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



一人、先に広場への入口に来ていたラビは、目の前の光景に思わず口を開いていた。



「うへあ…近くで見ると圧巻だな…ホラーさ…」



リーバーとほとんど変わらない身長を持つラビは、教団の中でも高身長の部類に入る。
しかし科学班の薬で幼児化した今では、周りの誰よりも視線の位置は低い。
普段はなんとも思わない一般団員でさえも、近付けば上から被さるような重圧を感じる。
ウイルスでゾンビと化している現時点でなら、尚更。



(体力はギリギリなんさ、慎重にいかねーと)



僅かでも睡眠を取り多少回復したと言っても、子供の体であれば大した力にはならない。
廊下から広場に続く入口には向かわず、ラビは上階へと続く階段に足を向けた。
吹き抜けの形に高い天井を作っている第一広場の周りには、螺旋状の階段と各階スペースが設けられている。
それは団員達の部屋だったり教団で利用する為の施設だったりと、様々だ。
上階へと上っていけば、其処から広場を見下ろすこともできる。
同時に、多少はシャンデリアへと近付くことができるだろう。



「此処からなら行けそーだな。うし」



周りにゾンビがいないことを確認して、身軽に持っていた鉄槌の槌部分をゴトリと地面に固定する。
片足を乗せてバランスを取りながら、目的の位置へと柄を定めた。
いつもの聞き慣れた言霊を口にすることもなく、するすると伸びていく鉄槌の柄はしかし迅速に小柄な体を天井へと運んだ。
徘徊するかのように彷徨っているゾンビ達は、真下を向くばかりで上を見ようとしない。
それが幸いしたらしい。



「っと…」



やがて辿り着いたシャンデリアは、間近で見ると心許ない造りをしていた。
足場などほとんどない、曲線美を描いた細い金属板に小さな足を乗せる。
しゃん、と微かに揺れたシャンデリアが鈴のような音を鳴らすが、高い天井とあって最下にいるゾンビ達の耳まで届くことはなかった。

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