第82章 誰が為に鐘は鳴る
「…よし。俺達も行くか」
僅かに口元に浮かべた笑みを消して、ラビとは対照的に慎重に一歩踏み出す。
そんなリーバーの腹から二人の様を傍観していた亡霊は、じっと興味深そうに小さくなるラビの背中を見送っていた。
「お前達は…信頼し合っでいるんだな…」
「ん?…ああ。じゃないとやってけない職だ」
「…コムイ室長のごども…本当は助げる為に、あの時庇ったんだろう?」
ゾンビウイルスに感染した亡者達に囲まれ、絶体絶命の危機に陥った時。
身を挺してコムイを守るフリをして、盛大な仕返しを成したリーバー。
しかし結果的に、あれは一時的にでもコムイを助けることとなった。
口ではぐちぐちと不満を言いつつも、心の奥底ではコムイに多大な尊敬の念を抱いている。
リーバーの体に直接取り憑いたからこそ、亡霊にも伝わってくる思いだ。
じっと確信に似た様子で見上げてくる亡者の、髪に隠れて見えない目を見返すと、リーバーは軽く肩を竦めた。
「さぁな」
肯定でも否定でもなく、ただ笑って。