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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「クロちゃんを誘き寄せんだから、他のエクソシストだって寄って来て当たり前。つーことでアレン達相手にすんのも想定内」

「その肝心のクロウリーの姿がないんだがな」

「派手に暴れれば姿現すだろ。あんだけ血気盛んなんだから」



ホルスターから鉄槌を取り出すと、ラビは小さな足でリーバーの前へと歩み出す。
そうして数十メートル先の暗い広場を、隻眼で観察し始めた。
クロスとの修業時代にて夜目に慣れているアレンとはまた別で、ラビの隻眼は暗闇でも細部まで物を見通すことができる。

唸り彷徨う亡者達。
広い床には教団のシンボルである十字架が刻まれている。
高い天井の上には豪華なシャンデリア。
幾重も壁に設置された窓には、治まる気配のない激しい雨が打ち付けていた。



「…一番使える場所はあそこだな」



不意にラビが指差したのは、高い天井に飾られたシャンデリアだった。
煌びやかな宝石が散りばめられた豪華な造りのそこにも、停電の影響で明かりは灯されていない。



「あそこからオレが揺さぶりかけっから、はんちょは隠れてろ」

「行けるのか?あんな所に」

「あんくらい、ちょろいさ」



ぺろりと舌で唇を濡らすと、ニッとラビが笑う。
その笑顔は、前にリーバーが南のことで挑発的に向けられた笑みと重なったが、この時程頼もしいと感じたことはなかった。



「はんちょも南もそりゃオレよか大人だけどさ。二人の知らない経験値も割と積んでるんで。少しは頼ってみろって」



こんな体でも使えるんさ、と笑うとラビは指先で器用に鉄槌を回し手頃な大きさへと変えた。



「んじゃな、クロちゃんは頼んださっ」



軽い足取りで先を駆け行く姿は、いつものラビと微塵も変わらない。
その小さくとも心強い背中に、リーバーは届かない声で思いを吐いた。



「お前が思ってるより、俺達はずっと頼りにしてるんだけどな」



子供だなどと、下に見たことはない。
どんなにアレンにからかわれ神田にサンドバックにされていようとも、ここまで利発で適応力と柔軟性を兼ね添えたエクソシストは早々いない。
それだけ確かな実力を持つ青年なのだ。

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