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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「リーバー班長」

「ん?」

「作戦は失敗してもいいから、今度は絶対に無事戻ってきて下さい」



肩に置かれていた大きな手にそっと自らの手を添えて、南は切実なる思いを吐いた。
またリーバーの安否に不安で揺らぐ思いはしたくない。



「絶対ですよ」

「…わかった。だからそんな顔するな」



眉尻を下げ、既に今から不安に満ちた表情を浮かべる南に、リーバーは普段と変わらない笑顔を向けた。
残される側の心はよくわかっているつもりだ。
特にこんな状況下では、南には不安しか残らないだろう。



「南が待っていてくれるならな」

「待ってますよ」

「じゃあ大丈夫だ。俺の求めるものはここにあるから」

「…班長…私、真面目に言ってます…」

「俺も大真面目だぞ?」



添えた手を逆に握られて、南の顔が赤みを帯びる。
そんな姿を微笑ましく見るリーバーに対し、ラビはぶすっと渋い膨れっ面をしていた。



「ラ、ラビもね」

「へ?」



そこへ話題を切り替えるように、慌てて腰を屈めて南が声を掛けてくる。
よもやこのタイミングで話し掛けられるとは思っていなかったラビは、不意打ちの間抜けな顔を見せた。



「今度はゾンビなんかになっちゃ駄目だよ。無理に体張って他人を庇わないこと。自分を一番に大切にして」

「あー…うん。頑張るさ」

「頑張るじゃなくて、本当に自分を第一にしてよっ?ラビってばいつも誰彼庇おうとするんだから…アレンと同じだよ」

「そだっけ」

「そう。これはエクソシストの任務じゃないんだから、優先順位は自分でいいの」



言いながらも、エクソシストの任務を見送るかのように心配事を口にする南。
こういう所は変わらないなぁと見つめながら、ラビは軽く肩を竦めた。



「ん。わかったさ。リーバーはんちょに何かあっても置いてくから任せとけ」

「おい待てラビ」

「うん。それくらいの意気込みでお願い」

「南まで返すな」

「だって、それくらいしないと。二人共自分の命を一番に優先して下さい。そしたらきっと、二人揃って戻って来られるはずだから」



最後の砦になった時は務めは果たそうと思うが、それは最悪の手段。
南の望みは二人の生存にある。

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