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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



二人の間に緊張が走る。
もしや起きたのか。
今の話を聞かれてしまっただろうか。



「ん……すー…」



しかし再び寝入るように深い寝息を漏らすと、南はすぐに動かなくなった。
上下に揺れる微かな彼女の胸の動作に、リーバーとラビは同時にほっと肩の力を抜く。
どうやら聞かれてはいなかったらしい。



「…止めるか。南を挟んでこんなこと」

「そーさな…なんであったって、南はちゃんとオレらに答えを出してくれるだろうし」

「ああ」



月日は違えど、同じ目で彼女のことを見てきたのだ。



「なんにでも真面目で、責任感が強くて」

「だから一人で無理する所もあんだけど」

「相手を思いやる優しい心も、芯のある強い心も持ってる」

「あと弱い自分を知ってる心もさ」

「…悪口か?」

「まさか。そこもオレの南の好きなとこ」

「……ああ。そうだな」



挙げれば幾つだって出てくる。
彼女に馳せる想いの数々。
それを改めて自覚すれば、この小さな争いが馬鹿馬鹿しくなった。



「はんちょ」

「ん?」

「今は何よりこの状況から脱することが先さ。…てことで、」



小さな拳を握ったラビの手が、南越しにリーバーへと向けられる。



「今は恋敵も休戦協定さ。南の為にも、絶対にオレ達でこの場を切り抜ける」

「…わかった。約束だ」



同様に握った拳をこつりとラビの拳に当てて、リーバーもまたしかと頷いた。
今は喧嘩などしている場合ではない。
同じ想いを抱えた女性(ひと)が、この腕の中にいるのだから。

必ず守り抜いてみせなければ。

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