第82章 誰が為に鐘は鳴る
「それは…いつ、だ?」
「…そこまで教える義理はねぇさ。んでも、はんちょと同じで答えは貰ってない。南が…ちゃんと答えを出すからって。それまで待ってて欲しいって言われたから、待つことにした」
「………」
「どんなに時間が掛かろうが、南なら絶対に答えを出すはずだから。それははんちょもわかんだろ」
「…ああ。そういう奴だからな」
大切なこと。
見逃せないこと。
そういうことに直面した時、南は時には痛い程に真っ直ぐ向き合い見つめてくる。
それはリーバーもラビもよく知っている彼女の長所の一つだ。
(ということは、今、南の中では───)
ラビとリーバー。
二人からの想いが交差しているということ。
彼女の中で、どんな思いが渦巻いているのだろうか。
ふと腕の中で静かに眠る南を見つめ、リーバーはそっと吐息を零した。
「なら…恨みっこ無しだな。南がどっちを選んでも」
「………そーさな」
どっちを選ぶか、など。
わかりきっている答えを呑み込んで、ラビも静かに頷いた。
「あ。」
「ん?」
「もし、南がどっちも選ばなかったら?」
「………」
(それは考えてなかった)
頭にはなかったが、決してないとは言い切れない未来。
想像して互いに顔色が曇る。
「…その時は…傷心会でもするか。ヤケ酒につき合え」
「…リョーカイ」
しかしそれが南の出した答えとならば致し方ない。
ぼそりと告げたリーバーに、ラビも一つ返事。
その時ばかりは敗北者同士、肩を並べて慰め合っても許されるだろう。