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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「どーせ結果はわかってたさ」



南の胸から離れた頭は、微かに俯き項垂れる。

結果などずっと前からわかっていた。
南の想いはリーバーに向いている。
その彼から想いを告げられたのならば、断る理由などない。

わかりきっていた。
それでもいざそれが現実となると、心の奥底が切り裂かれたように痛む。



「あー…言っとくが、返事は貰ってないぞ?」

「………へ?」



キリキリと痛む心。
それを止めたのは、思いも寄らぬ言葉。



「は?」



想いを告げておいて、何故返事を貰っていないのか。
意味がわからず慌てて顔を上げるラビに、リーバーは控え目に笑った。



「俺が先延ばししたんだ。俺の勝手で告げたものだから、南の心の整理ができるまで待つってな」

「整理、って…」

「わかるだろ?」

「………」



頭の回るラビならば、皆まで言わずとも理解できるはず。
そのリーバーの予想は的を得ていた。
黙り込んだラビの表情は何かを悟ったかのように、意味深に考え込んでいたから。



「まぁ、兎に角それを伝えたかっただけで…」

「………」

「ラビとは対等でいたいと言うか」

「…だから、それがずりぃんだって」



正々堂々、向き合われてしまえば下手な行動はできない。
横から掻っ攫う気はないが、どうせ実るのは二人の恋なのだ。
少しくらい自分の我儘を言ってもいいではないかという思いは、リーバーのお陰で脆くも萎んでしまった。

悔しそうに呟いたラビの隻眼がリーバーを捕える。
真っ直ぐに見上げる澄んだ翡翠色は、もう迷いを生じていなかった。



(心の整理が必要ってんなら…告げたのは恐らく本部襲撃後か)



凡その月日を頭の中で弾き出して、口を開く。
ならば恐らく、此方が先だった。






「オレも、南にはオレの気持ちを伝えてある」






後だの先だの、結局は関係ない。
手に入れた者勝ちだと、元旦にリーバーに真正面から告げられた。
確かにその通りだ。
だからこそ隠していても仕方のないこと。

不意のラビの告白に、今度はリーバーが固まる番だった。
驚き見開いたグレーの目が、小さな子供を見下ろす。
立場は違えど、長年共に働いてきた仲間であり好敵手。
ラビが嘘をついていないことなど明白だった。

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