第82章 誰が為に鐘は鳴る
子供であっても、中身はあのラビだ。
南のことを女性として好いていると、はっきり公言した青年。
そのことを不意に自覚してしまえば、南の心臓の揺れは別の音を奏でた。
(こ…これは結構な構図なのかもしれない…)
後ろには、淡い想いを抱いていた男性(ひと)。
前には、熱い想いを教えてくれた青年(ひと)。
二人に左右から挟まれた熱は、逃げ場がない。
「なんか…発熱しそうな気がする…」
「なんさ、寒さ感じんの?ならもっと引っ付いてねぇと。はんちょ」
「ああ。無理はするなよ、一番疲労してるのは南だろうからな」
「ああいえ違うんです…違うから…(そんなに体くっ付けないで下さい…!)」
とは二人に声を大にしては言えず。
南は渋々と体の力を諦め半分に抜いた。
(私が一番休めないかも…)
熱を帯びゆく顔を隠すように、伏せがちに微かな溜息を零して。
「───…すー…」
「………寝た、か?」
「…寝たさ」
うつらうつらと傾いていた頭が、やがてぽすりとリーバーの胸に落ちる。
二人に挟まれたまま、口元からは小さな寝息。
そんな南の姿に、ラビは感心気味に眉を下げた。
「さっすが、何処でも寝落ちられる科学班……危機感足りなさ過ぎじゃね」
「そこばっかりはな…南の凄いところだ」
「悪い意味でさ」
「…まぁ、」
それが自分限定ならまだしも、何処の馬の骨ともわからない男相手でも平気で添い寝してしまえそうだから心配は募る。
愚痴を垂れるラビに、苦笑混じりにリーバーも頷く。
仕事柄仕方のないことかもしれないが、もう少し女性としての意識を持って欲しいところ。
こうして、一人の女性として彼女を見ているのだから。