• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「ラビは其処。南はこっちだ」

「え?わわ…っ班長っ?」

「これなら南も力抜いて休めるだろ」

「…っ(逆に変な力入りますが…!?)」



腕を引かれ、すっぽりと南が背後から収まったのはリーバーの胸の中。
小さなラビの体を抱く形で、三人並んで身を寄せる。



「それもそれでなんか気に食わない…」

「文句言うな。お前の体じゃ南を支えられないだろ」



尤もなリーバーの言葉に、ぐぅとラビは呻く他なかった。



「ぁ、あの、リーバー班長…っ私なんかが寄り掛かったら班長が休めないんじゃ…」

「いや。寧ろこうしてくれてた方が助かる」

「ええっ」



体を離そうとすれば、あっさりと前で囲ったリーバーの二つの腕に阻まれる。
ラビを抱いた南ごとすっぽりと抱いて、毛布に包まれば小さなかまくらのようにじんわりと人肌で温まった。
確かに温かい。
他人の体温というものは、触れていれば安心感を促す。
しかしそれは相手にもよるもの。



(し、心臓の音が聞こえませんように…ッ)



バクバクと鳴り響く己の心臓を握る代わりに、ラビを抱く腕に力が入る。



「南…っ苦しんだけど…っ」

「あ!ご、ごめんラビ!」



腕の中で小さな悲鳴を漏らす子供に、慌てて力を緩める。
それでも南の心音はしっかりとラビに伝わっていたらしく、むすりとジト目で大きな隻眼が見上げた。



「ごめんって。怪我、痛んだ?」

「それは大丈夫だけど…じゃ、力加減できるようにこっちがイイ」

「え。あ」



くるりと体を反転させ、向かい合うようにして南の体に抱き付く。
抱きしめるというよりは抱き付いてくる小さな体は、子供であっても中身はあのラビだ。



「あの…胸に顔押し付けないでくれませんか…」

「位置的に仕方ねーさ。不可抗力」

「それは一般的に言うセクハラってものです」

「セクハラじゃねーさ。不可抗力」

「だから不可抗力って言えば許される訳じゃ…」



言い掛けた言葉は、不意に南の喉奥に呑み込まれた。



「不可抗力だって」



そう、拗ねるように口を尖らせながらもぎこちなく視線を逸らすラビの顔は、ほんのりと色付いていたから。


/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp