第16章 赤い夫との甘い夜
私はそこまで言うともう1度深呼吸をして、口を開いた。
『……やっぱり子どもは欲しい?』
征十郎は私の震える声に応えるように、優しい笑みを浮かべながら私の頬に手を当てて言った。
「ああ。欲しいよ」
まあ、そうだろうな。と私は心の中で思った。
「美桜は仕事の心配をしているが、別に代わりはいる。俺の心が不安定になるだけだが」
『……。そこが心配なんですけど』
「まあ我慢するさ」
『じゃあ子どもの事は前向きに考えてみる。病院とかも行かないとだし』
「そうだな……。俺もすまないね。唐突に重要なことを言ってしまって」
『こういう雰囲気の時とかじゃないと言えないでしょ?』
私は征十郎の頭に手を回しておでこをくっつけた。
『2人で頑張ろうね』
「ああ。新しい家族についてな」
そして短いキスをした。そしてすぐに、糸が切れたように私は深い闇へと落ちた。