第1章 出会い
3話 唐沢和也
「秋!お前また女の子惚れさせたのか?」
白川に笑いかけた直後、背中をどつかれた感覚と共に景気の良い声が頭上から降ってくる。
「やめろ唐沢、そして落ち着け」
背中をどついてきたのは唐沢和也(からさわかずや)背丈は秋と変わらないが性格は秋とは真反対。落ち着きはない、声がでかい。女子のことが大好き…
「んだよ元気ねぇなぁ!」
「んなこたねぇよ、お前が元気過ぎるだけだ」
座っている秋の首を絞めている手を引き剥がしながら文句を言うが意味はない。
「か、唐沢君。昨日送ってもらったお礼をしてただけだよ?」
白川は唇に人差し指を当て、少し困ったような顔で言った。
「そーだ!そもそも俺はそんなに次々と惚れさせるとかしないってかできねぇよ。俺に彼女がいたことないのはお前が一番知ってるだろうが」
唐沢とは小学校からの腐れ縁、性格は真反対だったが何故か気が合いこれまでずっと一緒にいた。
「はぁ…お前にゃ確かに彼女はいないが…」
そこまでいってまたため息をつく唐沢は無視し、白川に視線を戻す。
「悪いな、こいつが変な絡みかたして、後で絞めとくから」
「う、ううん大丈夫、それじゃあね西野君」
「おう」
たたたっと小走りで自分の席に向かう白川を見送ると後ろでぶつぶつ言っている唐沢の方を見る。
「唐沢、何か文句あんのかよ」
「ひでぇな、俺はお前に泣かされる女の子を減らそうと言ってんのにお前と来たら…」
「そりゃどうもっ!心配ないからそろそろ席に座っとけ!チャイムなるぞ!」
グイグイと唐沢の背中を押して席へ向かわせる。
(ったく、白川困ってたじゃねぇか)
首の後ろをガシガシとかき、先程の彼女の顔を思いだして悪いことしたな。と反省した。