第1章 出会い
8話 唐沢と別れてそれから...
唐沢が不満気に帰っていったあと、秋と白川は当たり障りのないことをしゃべっていく。
「なぁ、白川なんか良い本ないか?いま読むものがなくてさ。」
白川が読書家なのはクラスでも有名なこと、授業間の10分程の休憩でも大抵本を読んでいる。
秋は読書家というほどではないがやることがない時はなんとなく本を読んでいる。なのでごく遅いペースではあるが年に20冊ほどは読みきっている。
「え、うん。えと西野君は何が好きかな、ファンタジー?エッセイ?ホラー?」
「んー、ファンタジーかな。この前の魔法使いのやつとか面白かったぞ。」
白川の質問に秋がそう答えると白川は少しクスクスと笑った。
「な、なんだよ白川。」
「い、いや?ふふふ、ちょっと意外だなって。なんかすっごく難しい本読んでそうなのに、哲学の本とか。」
楽しそうに笑う彼女につられ秋も頬が緩む。
「はははっ、なんだよそれ、俺そんな難しそうな人間か?」
「ちょっとね?ふふ。」
二人で笑いあっていると秋はふと気がつく。
「あ、白川さっきありがとな、唐沢フォローしてくれて。」
唐沢が鏡に嫌われているのではと心配すると彼女は上手くフォローしてくれた。
「俺じゃうまくフォローできないからさ、白川いてくれて助かったよ。」
ニコッと笑いかけながら秋はお礼を言う。
白川は慌ててフルフルと首をふったが秋は気にしない。
「にしても、確かに鏡ちょっとそっけないよな。」
「もともとクールな子だから…でもっ!実はとっても優しくて乙女なんだよ?」
白川が上半身を大きく倒し、その大きな眼で秋をしたから覗き込むようにして言う。
(あ、その仕草かわいいかも…)
ふい自分の心に浮かんだ感想を胸の中でつぶやく。
少しだけ顔の温度が上がったのを感じるが、気にせず会話を続ける。
「そうなのか?例えば乙女ってどんなところ?」
「んーとね…んーと…それは…えと…」
口ごもる白川をみるとすぐにはでてこないようだ。
(まあこーゆーことってすぐにはでてこないよな。)
秋も唐沢の男らしいところ聞かれても答えられない。
二人してそんなことを考えていると白川と別れる道についた。
「あ、ばいばいだね。じゃあリレー頑張ろうね!」
「おう、またな!」
そういってそれぞれの帰路についた。