第6章 アドミッション
──何かにつまづいたとしても
誰かが支えてくれるよ
──ぼくらは進んでくよ
歌い終わった。
静かな時間が流れる。
少しして、一ノ瀬くんが動く。
「・・・っ・・・、ぁ・・・」
『、っと・・・え、え??』
「すみ、ませ・・・っ・・・」
『えー、あー・・・うん。
いーよいーよ、泣いて?』
「っ・・・く、う・・・・・・・・・っ」
『ほら、私の(無い)胸に飛び込んどいで』
「・・・っ普通、逆・・・でしょう、っ」
『細かい事は気にしなさんなって。
さ、おいで』
感極まったのか、ポロポロと涙を流す一ノ瀬くん。
うん、それでいいんだよ。
歌いたい時に歌って。
泣きたい時に泣いて。
それが人間ってものだ。
嗚咽を零しながら私の肩で泣き続ける一ノ瀬くんの背中を、腕を伸ばしてぽんぽんとあやしてあげる。
悲しきかな、身長差のせいで胸じゃなくて肩を貸した。
『・・・・・・もう大丈夫だよ』
「っふ、・・・う・・・ぁ・・・・・・っ!
わ、たしは・・・・・・もっと・・・うた、・・・たい・・・・・・!」
『・・・うん』
「でも・・・歌え、なくて・・・・・・っ、〝HAYATO〟で、居るしか・・・なくて・・・・・・・・・・・・っ!
私、の・・・・・・〝一ノ瀬トキヤ〟の・・・歌を・・・っ歌いたいのに・・・!」
『・・・うん、』
「歌が・・・っ、すきなのに・・・・・・、好きな・・・はずなのに・・・っ。・・・思いきり・・・歌う、のが・・・・・・・・・っく、・・・・・・怖くて・・・」
『・・・・・・うん』
「〝HAYATO〟としても・・・〝一ノ瀬トキヤ〟と、しても・・・・・・・・・どう歌え、ば・・・・・・いいのか・・・っ解らなくて・・・!
・・・それでも、音楽が・・・・・・音楽しか・・・っ無くて・・・」
『そっか・・・・・・、誰にも相談出来なかったんだね』
「・・・っ・・・は、い・・・」
『やっと、言えたんだね。
これからは・・・もっと頼ってよ』
「、っ・・・・・・」
『・・・、もう私が居るから。
仮パートナーとかの前に、友達でしょ?』
「・・・・・・、はい・・・っ」
だから、今だけお休みしよう。
〝HAYATO〟としても、〝一ノ瀬トキヤ〟としても。
今だけは、〝一ノ瀬くん〟として。
(SING&SMILE/Re:nG)