第6章 アドミッション
「私は、・・・・・・っ・・・」
『・・・うん』
「・・・・・・HAYATOと言う、存在を・・・作ってしまった・・・・・・。・・・だから・・・っ!」
『割り切れない?』
「ッ!」
『勝手に作って、演じて・・・本当の自分じゃなくなっちゃうよ?』
「・・・・・・ぇ・・・」
『HAYATOを作ったから、HAYATOを続けるの?
・・・違うよ。
今の一ノ瀬くんは、HAYATOって言う存在を言い訳にしてるだけだ』
「・・・・・・言い・・・訳?」
『HAYATOを作った‘から’。
HAYATOを演じた‘から’。
HAYATOだ‘から’。
・・・一ノ瀬くん、〝一ノ瀬トキヤ〟として・・・歌いたくないの?』
「、ッ違う・・・!!」
ガタンッ!!
叫ぶ。同時に、強い力で私は押し倒された。
あ、叫んでるのは一ノ瀬くんだ。なんて呑気に思いながら。
「私は・・・っ、・・・私は・・・・・・!」
『・・・うん』
「・・・・・・、・・・歌いたい・・・」
『・・・・・・』
「歌いたいん、です・・・・・・。
・・・・・・〝HAYATO〟として、ではなく・・・私として・・・・・・〝一ノ瀬トキヤ〟・・・として」
『・・・・・・うん』
「・・・・・・っ・・・でも・・・〝HAYATO〟としての自分が居て・・・、・・・同時に〝一ノ瀬トキヤ〟としての自分も居て・・・歌えないんです・・・!」
嘘つけ。
そう思ってるなら歌えるよ。
『・・・一ノ瀬くん』
「・・・・・・?」
『・・・歌おう』
「・・・は・・・?」
『あ、違った。
えーと、あれだ。もう私が伝えたい事を全部〝唄〟に込めて歌う。だから、聞いて』
「・・・、うた・・・?」
『うん。
聞いてから考えて。どうしたいのか、どうするのか』
決めるのは、君だよ。
君自身なんだ。
私はそれを見守るしかないから。
見守って、あと出来るとしたらせいぜい歌うくらい。
私は歌に伝えたい事とかを全部乗せて、君に届けるよ。
一ノ瀬くんの下から起き上がって、私はスマホを起動させる。
マイクなんて要らない。
目の前で歌って、想いをぶつけるだけ。