• テキストサイズ

音符のみつけ方

第6章 アドミッション


いつだったか。

私がまだ早乙女学園に入学するずっと前。本当にずっと前。
私には親友・・・じゃないな、相棒?・・・うーん、それも違うな。・・・そう、〝パートナー〟が居た。


そいつが私の唄を、好きって言ってくれた。
それが私の夢のきっかけ。



でも、そいつは・・・本当は凄く辛かったはずのにヘラヘラ笑って。

なんともない風に嘘の〝表情(かお)〟を貼り付けて。
大丈夫?って聞けば「大丈夫」って言って。
「平気だよ」「なんともないよ」って言って。
決まって最後は〝笑顔〟を取り繕って。

そんなの、ダメだ。






『一ノ瀬くんさ、それやめな』

「、だから・・・僕はHAYATOだよ?」

『自分の中に別の自分を作って・・・その別の自分を演じてさ。疲れるでしょ、それ』

「・・・・・・演じてなんか・・・」

『前に言ったよね、HAYATOの歌はHAYATOが歌うから意味があるんだよって。HAYATOの歌を一ノ瀬くんが歌っても意味が無いんだよ。
・・・何回でも言うよ?
HAYATOは、HAYATO。一ノ瀬くんは、一ノ瀬くん。
声が同じなら誰が歌っても同じなんて、そんなの絶対ダメだよ』

「・・・・・・・・・」

『何があったのか知らないけどさ。
歌いたいなら歌えばいいじゃん。辛いなら辛い、でいいじゃん。
・・・HAYATOのままで・・・一ノ瀬くん、思いきり歌えてるって言い切れるの?』

「・・・、っ・・・・・・!」






目を大きく見開いて、私を見る。

それは、〝HAYATO〟なのか〝一ノ瀬トキヤ〟なのか。






『・・・・・・日向先生が言ってたよ。
一ノ瀬くんの歌、ハートが篭ってなかったのに最近はいい歌歌うようになったって。・・・その原因、もしかしてHAYATOじゃないの?』

「っ・・・ち、が・・・・・・」

『一ノ瀬くん』

「、・・・?」

『本当のハートが篭った・・・誰も演じてない一ノ瀬くんの歌、聞かせてよ。
HAYATOって言うのを抜きにしてさ』

「・・・・・・・・・っ・・・・・・、め・・・・・・す・・・」

『・・・?』

「・・・・・・ダメ、なんです・・・。
わ、たしは・・・・・・っ」






声が震えてる。

大丈夫、君なら大丈夫たよ。
/ 196ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp