第17章 コンフュージョン
──自分勝手に諦めては
──独りよがりで傷ついてた
──年を取ってやっと気付きました
歌い終わったエレが、こっちをじっと見てくる。
多分オレに感想を求めてるんだと思う。
・・・凄いな、エレは。
『ごめんね、わたしってことばで人になにかを伝えるのとくいじゃないんだ。でも、歌なら・・・・・・伝わるかなっておもって』
「エレ・・・」
『わたしがなにか手助けできるのはここまで。
ここから先は・・・れんにしか、できない』
「オレにしか・・・。
・・・・・・まだ、間に合いますか・・・か。
・・・はは、本当にその通りだね・・・」
オレがついさっき呼び出して、隣で一緒にエレの歌を聞いていたジョージが「レン・・・」と呟く。
おいおい、お前からそんな心配そうな声で名前を呼ばれるなんて思わなかったよ。
・・・大丈夫、解ってるさ。
「・・・ジョージ、父さんへ連絡を取ってくれるか?」
「・・・!
レン、お前・・・」
「ああ・・・。
オレも腹を括るよ。
他の誰でもない、エレからのエールを無駄にする訳にはいかないからね」
『えーる・・・?・・・うん、せいこうってことでいっか』
「・・・成功も何も、お前はレンの心を動かすほどの歌を聞かせてくれたんだ。
本当に大したもんだ」
エレにお礼を言おうとすれば、『お、おれいとかはれんのおとうさんに話をしおわってからでいいよ』と言ってくれた。
・・・そうだ、まだ終わってない。
その後ジョージは一旦退出した。
きっと父さんに連絡を取ってくれてるんだろうね。
「・・・フフッ、それにしても・・・なんだかエレが幼い姿のままだから締まらないね」
『う・・・っ。
わすれかけようとしていた事を・・・!
でもいいもん、きっとその内ひとしれずにもとのすがたにもどるはずだしっ』
「あのボスが発端なんだから、人知れずって言うのは中々難しいんじゃないかな。
・・・・・・おや?」
『あー・・・そうだよね。あのひとの作ったくすりだもんね・・・さすがにむずかしいよね。
・・・ん?どしたの、れん?』
「・・・・・・エレ、そのスイッチ・・・」
『すいっち?』
「・・・校内放送、オンになってるよ?」
効果音で言うなら、ミュートなのかな。
文字通りにエレは固まった。
(インタビュア/クワガタP)