第17章 コンフュージョン
───「ねえ、そこで何してるの?」
───「・・・かぜの音と、もりの音きいてるの」
───「・・・音、?」
───「こうしてるとね、ひとの声はなんにも聞こえないからリラックスできるんだよー」
───「リラックス・・・?」
───「他にもほしを見たり、川でせせらぎ聞いててもリラックスできるし」
───「そう・・・。
いつも、ここにいるの?」
───「ううん、音をきいてたらここに着いたの。
いい曲つくれそうな気がして」
───「え・・・曲?」
───「うん、曲。
あたしね、しょうらい歌手になってみんなを笑顔にするのが夢なんだ!」
『れん!』
「・・・っ!
ぁ・・・・・・ああ、どうしたんだい?」
『できたよ、きょく!』
「え、もう・・・・・・この短時間でかい?」
『うんっ。
そんでね、今からこれうたうからきいて!』
「それは構わないけれど・・・今回はどう言う曲にしたんだい?」
『それは聞いてからのおたのしみってことで』
「お楽しみ、か・・・。
ふふ、それじゃあせっかくだしジョージも呼んでいいかい?」
『ん、いいよー』
目を閉じて思い出していた幼い頃に出会ったきり会えなくなってしまった少女の声と、幼いエレの声が重なってハッとした。
目の前に居るエレは思い出の中の少女と同じようにキラキラと眩しいくらいの笑顔を浮かべていて、やはり幼い頃に出会ったあの少女は間違いなくエレだ。
レコーディングルームへ来て1時間程度しか経っていないのに、完成したと活き活きしながら告げてくるエレ。
いつになく元気なその声と手に持ってる五線譜をいそいそと確認する目。
・・・これは本当に完成させたらしいね。
いつも自分で作った曲を、自分で歌う時のテンション。
・・・嗚呼。
なんら変わっていない。
昔に出会って、この学園で再会して。
困ったなあ。
愛の伝道師が聞いて呆れる・・・。
オレはとうの昔に初恋ってやつを体験して経験していたらしい。
さて・・・。
エレも歌うのを待ち遠しにしているようだし、ジョージを呼ぶとしようか。