第17章 コンフュージョン
「・・・ふう、とりあえずここでやり過ごそうか」
『う、わ。こんなところあったんだ・・・』
「みんなには秘密だよ?」
『いわないいわない』
早乙女学園の敷地内にある湖。
そのすぐ近くにある休憩スペース、の物陰。
誰が掘ったのか知らないけど、落とし穴っぽい窪みに私達は居た。
現在時刻はお昼。
昼休みの時間帯。
身体が戻ってくれれば言う事は無しなんだけど、多分早乙女学園長の事だからそんなに早くは戻らないだろう。
窪みの中は枯葉ばっか。
少し枝も混じってるけど、自然的な雰囲気がこれまた心地いい。
「・・・そう言えば、エレとこうして2人きりになるのも久々だね。
ああ、もちろん仮パートナーの作曲作業中じゃなくてね」
『あー・・・たしかに。
りむじんでおくってくれていらいだね。
うんてんせきにえんじょうじさんいたけど。
なんだっけ、ふたりのざいばつからすかうとされるはずだったんだっけ?』
「そうだったね・・・。
でも、あの日エレに財閥の為に歌えって言わなくて良かったと今でも思ってるよ」
『え?』
「エレには、何かに縛られながら音楽をやらないでほしいんだ」
『・・・わたし、には??』
「ほら・・・アイツは期限付きの音楽活動を許されてる、って言ったよね」
目を少しだけ伏せて、レンが言った。
・・・あれから、3ヶ月経っちゃったんだ。
真斗が許されてるのは、1年。
この学校で音楽活動が出来るのは、後5ヶ月くらい。半年を切ってる。
5ヶ月したら、この学校はみんな卒業。
それと同時に真斗の音楽がそこで終わっちゃう。
「オレは、その逆さ」
『えっ?』
「ねえ、エレ。
オレは、エレの言うような人間じゃないんだ」
『・・・はい?』
「・・・財閥ってのはね、必要なのは次男まで。
三男は別に要らないのさ」
何を、言ってるんだろう。
素直にそう思った。
必要じゃない、不必要な人間なんて居ないのに。
「オレはね、聖川みたいにどうしても音楽がやりたいから入った訳じゃないんだ」
『・・・じゃあなんで?』
「広告塔、だよ」
ざあっ、と風が吹いた気がした。