第16章 フィーリング
『購入、って・・・。いくらだったんですか、?』
「ひみつー♪」
『秘密、じゃないでしょうっ。
金銭面に疎い私でもさすがに気が引けます、何円だったんですか?』
「教えないっ!
grayちゃんの事だから、きっとチケット代払うとかでしょ?」
『当たり前です、私が寿さんを誘ったんですから私が払うのは普通ですよ?』
「いいからいいから」
『寿さん・・・』
「本当に、気にしないで?
これはいっつも素敵な歌を聞かせてくれる分と、4人の中でぼくを選んでくれた分だから」
『・・・・・・、でも・・・・・・』
「grayちゃんってばガンコだなあ。・・・あっ、そうだ・・・。
だったら、ぼくのお願いを2つだけ聞いてくれるってのはどう?
そうすれば一石二鳥、等価交換でしょっ?」
ガンコなのはお互い様ですぜ寿さんや。
お金を奢ってもらったり借りたりするのは、いくらなんでも本当に気が引ける。寿さんを信用していないって訳じゃないけど、なんと言うか・・・やだ。
なんだか上手いこと言いくるめられたような気もしないでも無いけど・・・「お願いっ」と頼み込まれた私はしぶしぶその提案を聞いたのだった。
『言っときますけど、テレビ出てとかは無しですからね』
「解ってる解ってる♪
まずひとつ目は・・・・・・grayちゃんの、本名教えて?」
『・・・はぇ?』
一体どんな事を言われるのかと身構えてれば、私の名前を知りたいらしい。
ああそう言や私芸名・・・と言うかLINKのアカ名で通してたっけ。
『・・・改めまして、東椰心羽です』
「心羽、ちゃん・・・かぁ。
このちゃんって呼んでもいい??」
『、構いませんよ。お好きにどーぞ』
「わーいっ!
じゃあじゃあ、ふたつ目!
あのね、一回だけ。一回だけでいいから・・・」
私の本名を教えて、さっそく独自の呼び方をする寿さん。
そう言えば仮パのみんなとも名前の呼び方であれこれあったっけなあ、と思いながら最後のふたつ目のお願いを待った。
一回だけ。
・・・なんだ、一回だけって?
どうしてもやって欲しかった事なんだろうか、寿さんは意を決したように言ってきた。
「・・・このちゃんと、ツーショット撮りたい」