第3章 強制的同居生活
真下から虎之助の声が聞こえてきて、鈴花は目線を下げる。
手にしたスマホの画面の中。
そこでは今にも飛び出してきそうな具合に携帯の画面にドアップで映り込み、こちらを恨みがましく見つめる虎之助の姿があった。
更には“戻す”のボタンが“呼び戻す”に若干変わっている。
「本当に……本当なんだ」
『だから、さっきからそう言ってるだろ?』
この目で確かに見たのだから、間違いはないだろう。
……とは言え、やはり鈴花の頭は中々事実を受け入れられない。
そこで試しに頬っぺたをつねってみる。
「……痛い」
『当たり前だろーが、バカ』
辛辣な言葉が返ってきて落ち込むどころか、自分でも馬鹿なことをしていると同調してしまった。
だって、誰がこんなファンタジー的展開を受け入れられるというのか。
ゲームの中のキャラクター(しかもイケメン)が現実に現れ、挙げ句の果てには一緒に暮らさなくてはいけないだなんて。
笑えない冗談も良いところである。