第2章 ~1日目~
自分に向けて『あり得ない』と心の中では呆れながらも、枕元にあったスマホを鈴花は手に取る。
そして昨日は真っ黒な画面にしかならなかった“彼氏アプリ”を開いた。
「ん? あれ……昨日と違う」
昨日は“待機中”としか表示されなかったが、今度は“GAME START”と何度か文字が点滅したかと思うと。
彼氏アプリの文字がだんだんと浮かび上がり、徐々に消えていくと同時に画面が切り替わる。
フローリングの床にソファーと言った具合に、至って普通のリビングらしき部屋の輪郭を映し出し、そこには何故か目の前の彼が上半身から上の姿で画面の真ん中に存在している。
左下の隅にはハート型のメーターがあり、どうやらこれが好感度を表しているらしい。
右上には“彼のプロフィール”と書かれた文字があり、試しにそこをタップしてみる。
「名前は……篠原 虎之助(しのはら とらのすけ)
あだ名はトラ…?」
「…そ。それが俺の名前」