第2章 世界
雅治の朝練はなく、平常運転で始まる1日
男子生徒の制服に腕を通し、鞄を持って下に行く
既に朝食を食べ終えた雅治は、リビングのソファーで座っている
『行く?』
仁「ん」
玄関から呼べばすぐに現れ、靴を履く
仁「いってくるナリ」
『いってきます』
通学路を歩いていると時間が少し早いせいか
真新しい制服に身を包んだ人達が通り過ぎていく
私の歩幅はかなり狭く、そして何よりも遅い
雅治はいつも合わせてくれる
『先に行ってもいいのに』
仁「ん?お前さんが心配なんじゃ」
『どうも』
一昨年の冬、通学路で倒れていた
原因は誰にも言えない霊関係の事であった
誰も通らない近道なので雅治が来てくれなければ死んでいた
それ以来、一緒に登下校をするようになった
体はまだ弱くはない、いたって健康体のちょっと下
中庭には今年の3年生が集まっていた
私はそれを遠くで眺めている
あんな人ごみの中に入れる体力は持ち合わせていない
身長も並の高校生なので低くはない
?「氷月ー!会いたかったよー!!」
『危ない』
?「ふばっ!」
後ろから聞こえた声に振り返れば
友達が飛びついてきた
とっさに避けて再度確認をする
同級生で唯一の友達である水島奈々だ
水島「なんで避けるのっ!」
『リアルドッジボールかと思って』
水島「え!私太った!?」
『見た目は変わってないけど』
水島「と言うか、氷月が細すぎなのよ!何をやったらそんなに細くなれる訳!」
『食事を抜けば自然と』
水島「はっ!だから昼を食べないのか!?私もそうしよう!!」
『テニス部のマネをやっていれば無理じゃない?』
水島「はっ!そうかっ!!」
?「朝から賑やかだね」
さらに後ろから現れたのは我らが誇るテニス部レギュラー陣
そして、最初に声を掛けたのは部長の幸村精市
幸「誰にフルネーム紹介しているの?」
『さあ?自分じゃないかな?』
幸「本当に君は面白いね」
優しい笑顔を見せれば、後ろから黒いオーラが見える
テニス部レギュラー陣全員が見えるためこれは霊現象ではないようだ
皆は彼の事を怖がっているが、私にはさっぱりわからない
普通に接していれば、優しく綺麗な男子高校生だ