第7章 (ロー、シャチ、ペンギン、キス)
ペンギンは最後の質問に答えながらりんの身支度を整える。
「シャチ、りんにキスし過ぎだろ。船長にバラされても直さないぞ」
「え。なんでバレた?」
「りんー。シャチはどこに『おーじさま』するんだ?」
ペンギンがりんに問いかけると昨晩と同じように自身の体のあちこちを指差した。
「こことこことこことここもここも…」
「うおー!りん、それはしーって言っただろー」
「……!」
はっとしたりんがペンギンに指をたてて『しー』のポーズをする。
「まぁ、おれも人の事言えないかもな。りん、おれとの『おーじさま』もしーだからな」
「しー!」
「おいまてペンギン。おま」
「鼻先だ。そんな深い意味ねぇよ」
まだ起きぬ船員達もいるが三人だけで食堂に向かう。
「いみ?なに?」
「りんには難しい話だぞー」
ペンギンとシャチの間でそれぞれと手を繋ぎ歩く。
食堂につくと、珍しくローが起きており熱そうなコーヒーを飲んでいた。
いや、目の下のクマの濃さをみるかぎりまた徹夜で医学書でも読んでいたのかもしれない。前の島で買い込んだ本や研究報告誌は山のようだった。
「ロー!」
「…あぁ、りんか。おはよう」
「おあよ!」
りんがローの膝によじ登る。いつもりんの事になるといち速く反応するローが、今日は少しばかり反応が遅い。
(今日で何徹したんだ?…まさか前の島からずっと?)
なにかやらかしたら相当バラされると恐れたのはペンギンだけでないらしい。
シャチが目配せを寄越して『触らぬ神に祟り無し』と声に出さずに口を動かした。
ペンギンは小さく頷くとコックの元へ朝食を取りに行く。
「さ、りん。しっかり噛むんだ」
「あーん」
「あーんじゃなくて自分で食べなさい」
「むう」
ローの膝の上でフォークを持ち、自分で食事をするりん。あまり甘やかすのも悪いので食事くらいはやらせている。
実際、ゆっくり食べれば汚さずこぼさず出来るようになったのだから。
「昨日は寝れたかりん?」
ローがりんの髪を撫でながら問いかける。
りんは口をモグモグさせながら答えた。