第7章 (ロー、シャチ、ペンギン、キス)
「ぺん、おきた。そとみた」
「へぇ。何かみえたか?」
「ない。あしたある?」
「明日には見えるだろうな。…寒くなかったか?」
「あたかかした!」
「あたかか?なんだそれは」
その言葉にりんはフォークを置いてローに抱きついた。
「あたかかー」
「……ペンギン?」
「なんすか?」
「……いや、いい」
しれっと朝食をたべながら返事をするペンギンに暫く睨みを効かせたが、変わらぬ顔色に疚しい事はしていないのだとローは判断した。
本当に人に言えぬ事はしていないのだし、慌てる必要はない。ただちょっと話の流れ的にこのまま進むと厄介なことになりそうで…
「りん、今日は何をしたい?にぃちゃんが何でもしてやるぞー」
シャチがりんに話しかけた。ナイス相棒。どうかそのままりんの気を反らせてくれ。
話している間に、船員たちが食堂に集まってくる。
「えほん!おーじさま!」
「おー。大好きだなー」
「おーじさますき!みんなおーじさまする」
「ん?」
(なんだ?みんな『おーじさま』する?いやそれよりさっきより話が…)
ペンギンが青ざめているとローが優しい声色でりんに話しかけた。
「りん、『みんなおーじさまする』ってのはなんだ?」
「おーじさまする!」
「…おれに『おーじさま』してみろ」
「んー」
りんがローの顔に両手を添えて唇にキスをした。
「ほう?…で、みんなってのは誰だ?」
「ローぉ、しあーち、ぺーん、あざあしー、」
数えるように船員の名があがる。
呼ばれた船員はなんだなんだとローの周りに集合し始めた。
「…りんは、こいつら全員から『おーじさま』されたのか?」
「ん!」
ドン!とローから何かが発せられた。船員たちの体が動かない。
船員たちの嬉しそうな、不安そうな声が聞こえる。
「うお?!なんだこれ!もしかして我らが船長も覇気が…?!」
「ぃや、これ覇気っつーか怒気…」
ローがりんを膝から降ろすとゆらりとたちあがる。
「やっちまった。悪ィなペンギン」
「つか、こんなに『おーじさま』いたのか」
ブゥンと青いサークルが広がったのを見てシャチとペンギンは祈るような気持ちで目をつぶる。
どうか、誰のパーツか判る程度のバラし加減でありますように。