第2章 今宵月が見えずとも
「大人しくしておいた方がいいですよ。下手に動くと腕が折れます」
「なんなんだお前は⁉︎離せ‼︎」
「離せばまた彼女に危害を加えるでしょう?」
「お前には関係ないだろう⁉︎関係ないヤツは引っ込んでろ‼︎」
「関係あります。知り合いが殴られているのを見過ごすほどオレは薄情な人間ではないので」
そう言って更に体重をかけると男の動きが止まった。声も出ないほどの痛みだったようだ。
「おい氷室どうした……ってなんだコレ⁉︎」
「あれー?なつめちんどうしたのー?」
福井さんとアツシが追いついてくれたので、少しだけ腕を緩めてやった。觀念したのか男は動かない。
「この男が彼女を殴っていたので止めただけです。正当防衛ですよ」
「正当防衛って氷室……お前なぁ……。もういいから離してやれ」
「そういう訳にはいきません。このまま警察に突き出します」
警察、という単語に男が反応した。