第2章 今宵月が見えずとも
それから数日経ったある日、オレはアツシに声をかけた。
「アツシ、今日は少し本屋へ寄ってもいいかい?」
「んー、いいけどなんで〜?」
「今日は新刊の発売日なんだよ」
「あ、そーだオレもマンガ買わなきゃな〜」
朝から降り続いている雨は練習が終わった今も止みそうにない。こんな日は読書にうってつけだ。
「なんだお前らも本屋寄るのかよ」
「福井さんもですか?」
「まーな。今月の月バスまだ買ってねーから」
「それじゃ一緒に行きましょうか」
「おう、いいぜ」
三人で駅前の本屋へ寄りそれぞれの目当ての物を買い終えると、時刻は寮の門限近くになっていた。そろそろ帰らなければマズい。急いで店から出ると、向かいのコンビニから続く路地の奥から男女の言い争う声が聞こえてきた。痴話喧嘩かと思いスルーしようとしたが、女の方の声に聞き覚えのあることに気づく。
……この声は、まさか⁉︎
「なつめさん‼︎」