第7章 どろどろ(エルSaid)
ざあざあと道路に落ちた水滴がよく響く。それにいつもより静かだからとても響く。
「待っててよかったかも」
ロイがこちらを見た。
「濡れて帰るの、あんま好きじゃなくてさ」
苦笑いしてみせるとロイは少し不機嫌そうな顔をして俺を見た。
「…この前のこと怒ってんの?」
「怒ってはないが」
「怖いんだけど、その顔」
ロイは深い溜め息をして、先の道を眺めた。
俺だってあんまり隠したくない、でも逆に頼りさせすぎるのも嫌だった。
だから隠すしかなかった。
でも
「エル」
「家だぞ」
ロイに言われて横を見ると家があった。もうそこまで来てたか、と思った。
「あ…ありがと、傘も、な」
「別にたいしたことじゃないだろ」
冷たく言われた。いつものロイだ。
「じゃあ明日」
ロイはそう言って家の方へ帰っていった。それを少し見送りながら家に入った。