第7章 死神の事情
赤間側
回線を繋ぐと
言葉の戦争をしていた
下の階の教室では接戦状態でもなさそうだ
言葉に全くと言っていいほど緊迫感はない
優馬は皆に水を配っている
それでも氷月達の会話は続いている
アイツは言った
〈あなたのせいで!あの人は死んだのよ!!私の彼氏は!!!〉
彼氏、ね
黄「大丈夫だと思う?」
赤「さあ、わかんないよ」
上風「このままだったら?」
皆の顔は不安の色に染まっている
氷月の事が好きな仁王も
俺と雷地は長い付き合いだからこそわかる
大丈夫だと思っても
年々アイツは弱くなっている
自分の気持ちを完全に殺して生きている
俺はアイツの事が心配だ
生まれて10を超えると
俺と雷地は毎回氷月を探す
アイツからは絶対にやってこない
俺達に迷惑を掛けるからと言って
だから俺達が探す
探して、見つけ出して、救う
だけど年々アイツを見つけ出す前に
何か事件は起こってしまっている
救う事が出来なくなってしまっている
開いている回線で聞こえてくる声は
芯から凍るような
冷徹、無慈悲、残酷
こんな言葉が似合うような感じの声音
テニス部の顔はドンドン青くなっている
無理もないな
ふと自分の考えにふけっていた時
ある一言が聞こえてくる
香【じゃあ、死んでくれないかな?】
【この仕事が片付いたら考えるよ】
!
今、なんて言った!?
アイツは!今!!
香【私が生きている時かな?】
【それは、ないね】
その言葉が終わったのと同時に
向こうが慌てだす
俺は大きな声で口論している2人の言葉に耳を傾ける事は出来なかった
死ぬ?
アイツが?
また、俺達の目の前で消えて行くのか?
なんで!お前はいつも!!
俺は知らない間に拳を強く握っていた
俺は味方を守る事は出来なくても
相手に一撃を与える事なら出来る
俺達は3人で1人なんだ
誰も欠けてはいけない
それは雷地の言った言葉だ
俺達はそれに誓った
だけど、何時も最初にいなくなるのは
氷月だった
何時の時代も、どんな場所でも
アイツが最初に消えて行く
そして、帰ってくるのは1番最後
取り残された俺達は
ただ単に
寂しいんだよ
教室の戸が開いて
2人が帰ってきた