第13章 はじまる
『今度はそちらが考え事ですか?』
俺は我に返り氷月を見た
氷月の視線は読んでおる本に落としておった
仁「フッ、まあな」
『へー』
仁「知りたいか?」
『まあ、知りたいですけどやめて置きます』
仁「どうしてじゃ?」
『なんとなく』
仁「なんとなくって」
『だって、ね』
その青色の目にはしっかりと俺が写っておった
『どうせ、何かを振り返っていたんだしょ?』
仁「どうしてわかるんじゃ?」
『神様だから、なんてのは冗談で』
持っていた本を閉じ俺の方を向いた
『仁王君の表情が真剣になったり笑ったり辛そうになったりといろいろな表情になっていたので』
仁「ずっと見ておったんか」
『はい』
ストレートじゃのう
『では、興味本位で聞きたいですね』
仁「うーん、やっぱ教えん」
『クス、そうですか』
どうせわかっておるじゃろ
『僕は他人を寄せ付けたくなかっただけです』
仁「!」
氷月は上を見ておった、空を
『今回のように巻き込んでしまうのが怖くて、守れる自信もなかったんです。3年前は別の人達とチームを組んでいた。ですが、冬での仕事で失敗をしてしまい、僕以外は死んでしまったのです。そこで守れないのだと確信してしまいました』
仁「あの時の......」
『けど、高校に上がって雷地と炎方と組んで一番最初に助けたのは優馬だったんです。記憶の削除に雷地が失敗をして優馬が手伝いたい、とそれ以来はずっと一緒に行動しています』
仁「そう、じゃったんか」
『僕は臆病で貧弱で愚か者。こう言った類の言葉が似合いますね』
そう言った時の笑顔は泣いているようじゃった
俺は起き上がって座った
仁「そんな事はなか。あの時の決断はそんなヤツには出来ん」
『あの時?』
仁「秘薬の事じゃよ」
『それでも、今は怖いですよ。失敗したら幸村君の笑顔を食らうのでね』
仁「それが嫌じゃったら、絶対に成功させるんじゃ」
『ええ、1か月後に準備が出来ます。10月に入ってすぐに僕は学校に来ませんので』
仁「わかった」
『それまで、よろしくお願いします』
仁「その後もじゃ」
『わかりました』
俺達は2人で笑った
部活動の話で盛り上がったり
幸村の事でも......