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仕事は幽霊退治

第13章 はじまる


仁王側

俺達はいつものようにサボった

日陰で寝転んでいると時折風が吹く

氷月は座って読書しておる

風で髪が少し乱れると直す仕草に胸が高まる

『なんですか?仁王君』

俺が見ているのに気づいておった氷月が

1学期で見せてくれんかった

綺麗な笑顔を向けてきた

仁「綺麗だと思っただけじゃよ」

『クス、そうですか』

最近、よう笑うようになった

最初会った時なんて無表情で言葉も冷たくてな

運動しておる時では目立たんが体力があった

サボっている割には頭がよかった

委員会にもちゃんと出席するし

文化祭や体育祭にも出席はしておった

じゃが、ある時見てしもうた

雪が降っておる屋上で1人

泣いておる氷月を

声を殺してフェンスを強く握って

悲しいよりも、辛くて悔しく苛立っておった感じじゃ

それが中学での最後の姿じゃった

卒業式には姿を見かけたが

結局、声を掛ける事も出来んかった

その時の背中が小さくて寂しそうじゃった

高校に上がって3年間一緒のクラス分けになった

1年目ではただ見ておったんじゃが

幸村が臨時のマネが欲しいと言いだすから

アイツを氷月を誘った

最初は勿論断られた

じゃが、何度も行ってるうちに俺の中で氷月にだんだん興味が湧いてきた

会うたびに辛そうな顔をして

教室でも1人で読書をしておって

時々、教室に居ないと思ったら

図書館か屋上におって

まるで誰も寄せ付けん感じじゃった

そんな事を知りたくなった

ある日、氷月が俺との勝負に負けて臨時のマネをする事になった

平日ではファンの奴らが煩いので休みの日にしてほしいと言った

幸村は渋々承諾しよった

それ以来、話し掛けやすくなってから一緒にサボる事が多くなった

昼ごはんは食わずに缶コーヒーで済ますのも知った

意外と話しやすかったりしたし

嘘偽りでもソイツの笑顔を何度か見て行くうちに

胸が高まるのを知った

これで俺はようやく氷月の事が好きだと知った

何かを抱え込んでいるその背中を守りたくなった

相談事でもいいから何でも知りたくなった

だから、一緒に教室移動をしたり帰ったりした

でも、大きく変わったのはあの夏休みじゃった

知ってから、余計に守りたくなった
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