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時と光と風の中で

第6章 恋の策謀事件(上)


アフロディティーは怒りに燃えていた。そしてキューピッドに嫌気がさしていた。もう彼のことはうんざり、できれば彼の前から消えたいと思うようになったのだ。そんな中声をかけてくれたのがマールスだった。
「やあ、アフロディティー。おはよう・・・どうかしたの?」
「何でもないわよ。」
「女の子が怒ってると肌に良くないよ。」
マールスは彼女に一緒にご飯を食べないかと誘ってくれた。
「別にいいわよ。」
2人は料理を運びテーブルに着くとほっと胸をなで下ろした。
「やっと落ち着いてきたみたいだね。」
マールスがにっこり笑った。
「そうね。なんだかマールスといると元気が出るわね。」
それからは2人で食べながら話した。
「僕の本当の名前はマーウォルスって言うんだ。」
「へえ、そうなんだ。知らなかったなぁ。」
「僕は三機能イデオロギーを捧げられたのさ。」
マールスは話題を変えてアフロディティーを楽しませた。
「三機能イデオロギーって何?」
彼女がマールスに聞いた。
「これはデュメジルの研究のなかでも最も知名度が高いのが神話群に共通した三分構造が見られるという”三機能仮説”なんだ。『三区分イデオロギー』『三機能体系』『三機能イデオロギー』『三機能構造』この4つからなるのさ。」
マールスは一息ついてから話を続けた。
「この仮説によれば、原印欧語族の社会と宗教および神話は、上位から順に『主権』『戦闘』『その他生産など』の三つに区分され、このイデオロギーが社会階層や神学の主要部分を構成していた、というんだって。それぞれ第一、第二、第三機能 (F1, F2, F3) と呼ばれるんだ。 F1はさらに『呪術的至上権』と『法律的至上権』に分割され、相互補完的に機能するのさ。前者は攻撃的で暗く、霊感に満ち、激しいと表徴されるが、後者は理論的で明るく、穏やかで善意に満ちていると表象されるのさ。 同様の分割はF2にも見られるけど、F1ほど明確ではないんだ。 F3は、神話によれば本来集団には存在せず、後に闘争を経てF1, F2に加わったのさ。 また三機能を包括する女神の存在も確認されるんだって。」
「マールスっていつも詳しいから感心しちゃうな。」
彼女は彼の話に夢中になった。
「いや~、ウンディーネほど詳しくないけどね。」
2人は話に華を咲かせながら朝食を食べた。
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