第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
夏美は中学時代の話をする。
辰也が小学校を卒業してからは、学年が違ったため中々三人で会えなくなる。辰也がいなくても大我はどんどん上手くなり、身体も大きくなっていた。そして、夏美と大我も中学に入学するが、大我は違う学区で彼と会うことも難しくなった。
夏美はストリートバスケをしていた大我に偶然会い、久しぶりの再会を喜んでいたところ、辰也が現れて勝負を挑み、初めて大我が勝った。それからも2人はストバスで勝ち負けを繰り返していたが、やがて2人、いや3人の関係が崩れていく。
「…そう。どんどん上手くなって、才能を開花させていく大我にお兄ちゃんの嫉妬がどんどん酷くなって、ついには。」
夏美は首に付けていたリングのネックレスを取って、高尾の前に見せる。
「50勝目を賭けた試合をする時に、このリングを賭けろとお兄ちゃんは言ったの。」
高尾は黙って見入るように夏美の話を聞き続けた。
その後大我が親の都合で日本に帰り、勝負がお預けになったことで、辰也は煮え切らない思いを抱えながら鬼神のごとく、師匠のアレックスの教えを請いスキルを磨いていった。
だが、その姿をみているともう昔みたいに無邪気に遊ぶことはできないと思うようになり、夏美は至極悲しんだ。
「昔が楽しすぎたから、つい今でもあの頃に戻りたいって思っちゃうし、何よりもうお兄ちゃんが苦しそうだから私もう見てられなくて…。」
感情移入をし過ぎたのか、夏美の目にはいつの間に溢れんばかりの涙が溜まり、ポトポトと零れ落ちていた。
「うん。そっかそっか。」
そんな夏美を高尾は優しく、子供をあやすように頭を撫でて、安心させる。