第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
「一昨日の夜にお兄ちゃんが久しぶりに帰ってきてて、そしたら色々思い出しちゃって、昨日泣いちゃったんだ。」
ぐすんとすすり泣く夏美を高尾は落ち着くまで頭をずっと撫で続ける。
(本当に夏美ちゃん、兄貴の事が好きなんだな。暇さえあれば兄貴の話してるしよ。やっぱり夏美ちゃんて、ブラコン?)
高尾は少し複雑だった。夏美の話を聞いていて、多分だが彼女の1番は兄の辰也であることは予測できた。
家族をここまで大切に思うのは寧ろいい事だ、けれど度が過ぎているんじゃないか。
ライバルがまさか好きな子の兄貴とは思わなかったし、血の繋がりにはやはり勝てない。
そう弱気になりかけた。
だけど高尾は自分の妹に言われた事を思い出して気を取り直す。
(俺は夏美ちゃんの顔だけを好きになったんじゃない!お前の事をもっと知りたいと思って自分から話を振った。どんな奴にも一癖二癖あるもんだ!あの偏屈な真ちゃんに認められた俺なんだぜ?絶対夏美ちゃんを振り向かせてやる!)
夏美がやっと落ち着いて高尾は真剣な眼差しと声色で彼女に問いかける。
「話は大体わかった。いつか兄貴さんが火神と自分自身を認めて楽になれるといいな。」
夏美は高尾の言葉を聞いて心がすごく軽くなるのを感じ、自然と笑顔になる。
「…うん!よかった、高尾君に話して!ありがとうね!」
「年が違うってのが大きいかもな。男ってさ、誰でも1番になりてぇって本能があるからさ。俺も真ちゃんの事認めるまでは正直辛かったし。だから、兄貴さんの気持ちはわからんでもないよ。」
夏美は高尾の言葉に感心する。普段はお調子者の彼が真面目に自分の話を茶化すことなく最後まで聞いてくれた。まるで本当の兄のように。
それだけで夏美の心は傾きかけてきていた。
だけどこれから2人にとって苦難の道が待っている。