第1章 瞳の先
「西谷・・・田中・・・・」
「「ヒィッ!!」」
地獄の底から響く様な静かな声が目の前の先輩方の名前を口にする。途端に二人の顔が青くなり身体が緊張と共に強張ったのが見て取れた。思わず私も身構えてしまう。
「ちょっと・・・・・いいかな・・・・?」
西谷先輩と田中先輩がギギギと人形のように顔を声の主へと向けた。その先には先程私が入部届を持ってきたと告げた人が仁王立ちをしていた。二人の反応からするに彼が主将の人なのだろう。優しい顔立ちだが底の方から威圧感があり、どこか強い気迫を感じる。
主将(仮)さんは笑顔である筈なのに背景に黒く禍々しいオーラを発していた。顔にも不吉な影が掛かっている。凄く・・・怖いです・・・。(分かる人には分かるネタ)
「俺、その子と話があるんだよ・・・ていうか俺が先にその子と話してたよね?分かるよな?」
「ウィスッ!!」
「すいませんでしたぁ!!」
二人は大声で謝罪をすると凄い勢いで頭を下げた。髪を揺らす程速いおじぎなんて初めて見た・・・。
主将(仮)さんはうむと頷くと、西谷先輩と田中先輩は素早く主将(仮)さんの前から退く。主将(仮)さんは苦笑を浮かべながら頬をポリポリと人差し指で掻きながら私へと歩いてくる。
「ごめんね、なんか変なとこ見せちゃって」
「あ、いえ、全然そんなこと・・・」
「ホントごめん。あれくらい言わないと多分アイツら君から離れないで延々しゃべくりまくってたと思うんだ」
「え・・・・?」