第3章 大きな過去と小さな現実
白川側
僕はさっきと同じ場所に立っていた
幸「回答を聞こうかな?」
少しメンドイけど優真がお世話になっている事ですし
『わかりました、1日だけでもよろしければ参加させて頂ます』
みんなの顔が少しだけ柔らかくなったが
仁王君の顔は髪の毛で見えない
はやり怖がられたのかもしれないな
あんな事を言ってしまった
もう、取返しがつかないのも知っている
柳「では、早速で悪いが仕事を覚えて貰いたいので、今日からその試合までマネージャーをしてくれ」
『わかりました。授業が終わったらすぐに着替えて部室に行けばいいでしょうか?』
柳「ああ、そうだ」
『わかりました。では、これ以上のお話がなければ失礼させて頂ますが、よろしいでしょうか?』
幸「ああ、構わないよ」
『わかりました。失礼します』
僕はしゃがんで仁王君の隣に置いてあった弁当箱を回収した
その際、僕は仁王君にしか聞こえないくらいの声で
『ごめんなさい』
と、謝っておいた
もちろん、こんな事で許してもらおうなんて全く思ってもいない
むしろ、こんな事で許してもらえる訳がない
僕は立ち上がり扉まで歩いた
扉の前でテニス部員に向き直った
『失礼しました』
僕はお敷きをし屋上を後にした
仁王側
幸村が珍しく優しい言葉を掛けてきた
俺は少しだけ恐怖が和らいだ
『失礼しました』
白川は屋上から姿を消した
俺の目の前に幸村がしゃがむ
幸「仁王、ここで何かあったのか?」
幸村が俺を見ておる
他のみんなも俺を見ておる
仁「......コート上の詐欺師が聞いて呆れるな」
俺は顔を上げて少しだけ笑って見せた
柳生「何か怖い事でもありましたか?」
流石3年間もパートナーをしとっただけの事がある
俺の心情まで見抜くとはな
仁「おまんらが来る前に白川と話しとってな、白川から簡単な質問を受けたんじゃ」
真「質問だと?」
仁「ああ、その質問は......」
あいつの顔を思い出した
いや顔ではない
あの、暗くて冷たい目を思い出した
仁「〈本当の仁王君はどこにいるんですか?〉だとよ」
俺はあの言葉だけだったら何も怖くなかったんだ
だが、あの目で見つめられると怖くなってしまうじゃ
情けないな、俺は