第18章 殺伐の春
最後のタオルを取り込んでいると
籠の中に入れた一番上のタオルが飛んで行ってしまった
『はぁ、洗い直しですか』
タオル1枚のために手洗いするのは少々面倒だが
早く取り込んで戻らないと皆が何気に心配してしまう
持っていたバインダーをタオルの上に乗せ
風でまた飛んでいかないように重り代わりになってもらう
部室の裏の方に飛んでいったと思い進んでみた、が
『気配が、2つ』
日差しの関係で日陰になっている部室の裏には少しの木々が生えている
そこから僕を狙う事なんで余裕だろう
警戒しながらタオルを探していく
飛んで行ったのは純白に等しいスポーツタオル
大きさもそれなりにあるし暗い此処では多少見つけやすいだろう
前に進んでは辺りを見ての繰り返し
木の枝に引っかかてないか確認するために木々を見るが
新緑の葉に純白のタオルは見つけられなかった
『何処に飛んで行ったんでしょうね』
先程からコソコソと僕の様子を窺っている
音を立てずに移動を繰り返しているようだ
仁「氷月ー、部活が終わるぜよー」
『すぐに行きます』
仁王君が大きな声で呼んでいたので
それに答えるために木々に背を向けた瞬間だった
何か突起物のような物が飛んでくる空気を割く音が聞こえた
少しだけ葉の揺れる音が聞こえれば場所の確認が出来た
今の自分の場所から素早く右に数歩ずれれば
部室の壁にキィンと鉄の物がぶつかれば
僕はそのまま体の向きを180度変えて木々の間を盗み見る
黒い人影が自分の来た方向に走っていくのが見えた
『!』
それを目で追いかけると別の木の影から投げナイフが3本飛んできた
そのままバク転で避ければ自分の立っていた所にナイフが地面に刺さった
そして最後に逃げた人影からナイフが、そして
『銃口...』
あの筒のような物、サイレンサーで音を消している
目の前に飛んでくるナイフに視線が釘付けになりながらも
相手の射線を逃れるように左へ飛んだ
『くっ...!』
パシュと小さな音が鳴ったすぐに右腕に痛みが走った
ナイフは無残に地面へと刺さって行った
銃口はまだ此方に向いている
投げナイフを投げた人物もまだその場に留まっている
痛み徐々に薄れなくなって行った
そして、態勢を崩さず数歩下がった