第14章 冬休み
白川側
皆が寝静まった
子猫は一様ケースの中に入れている
眠れない、最近では普通の夜でも眠れない
部屋からでて廊下を進む
暗いロビーの椅子に座り音楽プレイヤーを聞く
この時が一番安心する
椅子の上で体操座りをして抱えた膝の中に頭を埋める
この体勢も落ち着く
上着の1枚でも羽織ってこればよかった、この場も寒いから
目を閉じて、暗いロビーを見渡す
雰囲気は違うのにどうしても緊張してくる
寒い空間、冷たい床、1人ぼっちの今
あの時と何も変わらない、何も変わらない
...あの時?
あの時って、何時?
中学生の時はアリィが傍にいてくれた
小学生の時も少なからず優真がいた
じゃあ、それよりも前?
音楽が頭の中に入ってこない
イヤホンから直接耳に聞こえてくるのに
あの時、あの時、あの時...
小学生よりも前...
幼稚園児や保育園児の時代は、何をしていた?
そもそも自分は上風家に引き取られる前は何処に住んでいたんだ?
思い出せ
何処にいた?何をしていた?何故生きている?
何故生きている?
生きている?何故その疑問が浮かんだ?
もっと考えろ、もっと思い出せ
もっと、もっと、もっと、もっと...
『!』
不意に誰かの手が僕の肩を掴んだ
それに驚き現実世界に戻ってくる
ドクンと大きくなる鼓動
とっさに離れようと前に進もうと足を踏み出すが
踏み出した足元の床は今の位置よりも深く
体勢を崩した僕はそのまま前に倒れこんだのに
『痛くない...』
顔を見上げれば見知った顔が驚いた表情をしていた
その人物にイヤホンを外された
仁「こんな所で何をしとるんじゃ?」
『に、おう、君...?』
仁「積極的じゃのう」
『?』
自分を落ち着かせて周りを見る
薄暗い空間は変わらない、そして自分は床に倒れているはずなのに床が暖かい
よく見れば自分と同じ浴衣の模様であった
『あー、なるほど』
つまり自分は今、仁王君を押しておしその体の上に乗っているらしい
僕はすぐにその場をどいて立ちあがると仁王君も立ちあがった
『すいません、重かったですよね』
仁「そんな事ないぜよ。軽かったナリ」
『仁王君は何処かに用事ですか?』
仁「まあな、行くぜよ」
手を握られて仁王君の後ろを付いて行く