第11章 赤
白川側
意識が浮上してまた天井を見つめる
さっきと全く同じ夢
「ニャー...」
『クロ...』
顔の横で寝ていたのは黒い子猫だった
シロがいない
何処か狭い場所に挟まっているのでないかと上体を起こす
重い、体全体が重い
聞こえてくるのは雨の音
視界は歪んで見える
「ニャー」
すり寄ってくる黒猫は本当に心の癒しになる
こんな殺人鬼でも、こんな欠落した人間でも
最近よく過去の事を思いだす
友達はいない、先生も敵、近所の人からは痛い視線を
何も良い思い出がない
唯一良い思い出と呼べるのは
優真と出会った時くらいなものだ
「ニャー」
『ごめんね』
すり寄っている黒猫を抱き上げ、重い体に鞭を打ち
ベットから立ち上がる
『...ッ』
眩暈でベットに倒れこむ所を踏ん張り
その足取りでリビングに向かった
?「白川!」
『?』
「ニャー」
腕の中にいた黒猫はソファーに座っていた銀髪の隣で寝ている白猫の元に向かった
そして、黒猫と入れ違いで銀髪さんが目の前に
仁「何しとるんじゃ!寝なきゃいかんぜよ」
『クロが、寂しがってたので...』
仁「...お前さん。もっと自分を大切にしんしゃい」
『自分を、大切に...』
仁「そうじゃ。ほれ、ベットまで連れて行ってやるき」
『ありがとうございます』
仁王君に支えられながらベットに逆戻り
それを見ていたのか、子猫達も後を追ってくる
仁王側
仁「目、閉じんしゃい」
『無理です』
ベットまで運び横にさせたのはええんじゃが
中々寝ようとはせん
苦しそうな息遣い、ダルく汗ばんだ体、今にも閉じそうな虚ろな目
誰が見ても完全に体調不良者じゃ
寝ておる時に聞こえる「アリィ」と言う単語
きっと外国の人間の名前じゃろう
「アリィ」と言いながら苦しそうな表情で体に力をが入っていく
見ているこっちも苦しいぜよ
優真から任されてまだ2時間も経っとらんのにのう
ザーと聞こえる雨の音がコイツの睡眠を妨害しとるんか
音楽を流すわけにもいかんし、耳を塞ぐ事も出来んじゃろう
机の上に放りだされておる音楽プレイヤー
昨日の晩には見んかった
きっと途中で起きて聞いておったんじゃろうな
それだけ雨の日が嫌いなんか