第10章 知らないフリ
優真が怒って影夜の前に立つ
上風「お前は馬鹿か!そんなの見せても俺が喜ぶと思っているのか!」
珍しく怒りを露わにする優真に驚いておる俺達
対して影夜の後ろ姿は寂しそうじゃ
黒空「思っていません。ただ、楽しそうにテニスをやっている優真に嫉妬しただけですよ」
上風「!...ごめん、俺」
急に丸くなる優真に頭を撫でる影夜は
まるで兄弟じゃないかと思うような関係じゃった
黒空「それだけ楽しければ結構ですよ。サッカーとどちらをとっても僕は何を言いませんから。今なら戻れますよ」
上風「ごめん、やっぱ俺。こっちの方がすっげぇー楽しい、だからっ!」
黒空「わかっています。僕も応援しているので頑張ってくださいね」
上風「おうっ!」
カラン...
乾いた音がコートに響く
影夜の持って居ったラケットが手から滑り落ちておった
影夜の右手を見ると指先がピクピクと動いておるように見える
まるで痙攣しとるようじゃ
上風「影夜...」
黒空「少し休憩しましょう。僕はそのまま飲料水を買ってくるので優真はスポドリでいいですよね?」
上風「うん...」
黒空「後悔はしないのでしょう?なら、僕を盛大に使ってください。優真とはいつでもテニスは出来ますからね」
上風「わかった」
優真が落ちたラケットを拾うと影夜に渡す
じゃが、受け取ったのは左手じゃった
こちらに戻り影夜はラケットをしまう
黒空「ご迷惑をおかけしました。僕は暫くの間、席を外すので構わずやってください。それでは、失礼します」
丁寧な口調とお辞儀を残してテニスコートから離れて行く
テニスバックはそのまま残っており
しっかりとチャックも占めておった
上風「俺からは何にも言えないです。口止め、されているから」
俺達の聞きたい事がわかっておるようじゃ
じゃが、影夜が口止めする程何かを隠しておるのは
今に始まった事ではないじゃろうな
柳「あの回転はマジシャンのボールに似ているな」
「「!!」」
幸「...確かにね、言われてみれば」
摩訶不思議なボールの回転
確かにマジシャンのボールに似ておるのう
影夜は階段を上って道路を歩いて居った