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古きパートナー

第10章 知らないフリ


仁「変?なんでじゃ?」

『なんででしょうね』

いつもの無表情と他人行儀の口調にはもう慣れた

じゃが、寂しそうな感じが見えるのは気のせいじゃろうか?

仁「昔はどうだったんじゃ?中学入ってすぐとか」

『そうですね。楽しかったですよ。純粋に。その頃から優真と一緒にテニスをしていました』

仁「......」

『何時からだったでしょうね。テニスコートに立つのが怖くて、ラケットを握りたくない、試合なんてしたくない、誰にも見られたくない。そう思ってしまうようになったんです』

仁「1人の時はどうなんじゃ?壁打ちとかは」

『つまらないです。すぐに苦しくなって、足元が急に消える感覚があります』

仁「足元がか?」

『はい』

足元が急に消える感覚?

なんじゃそれは

仁「俺とやったときはどうじゃった?」

『?、そういえば...』

仁「?」

『なんだか久しぶりに楽しめました』

仁「!」

これが無表情じゃなかったら俺はコイツに抱き着いていたな

声が、楽しそうじゃった

仁「明日もせんか?」

『明日は優真との約束があるのでは?』

仁「そうじゃな。お前さんも一緒にって事じゃ」

『遠慮します。僕では足手まといですから』

仁「そんな事はないぜよ。お前さん十分に強いしのう」

『それでもです。明日は別件が入っているので朝からいません』

仁「そうか、退屈じゃのう」

『そんな事言っていますと、幸村君に怒られます』

仁「...わりと冗談じゃないかもな」

本気で退屈なんじゃよ

お前さんが居らんとな

仁「3日後から5日間予定はあるか?」

『いえ、特にはありません』

仁「なら、俺達の全国大会を身に来てくれんか?」

『そうですね、マネージャーですから見に行きます』

仁「そうか」

『あ、もうこんな時間ですか』

時計を見れば11時を回った所じゃ

『すいません長居してしまって、僕はこれで失礼します』

仁「おう、わかったぜよ」

『おやすみなさい、仁王君』

目薬をポケットに入れてそのまま振り向かずに出て行った

隣の扉が開いて閉まるのを音で確認すれば

静寂が訪れる

仁「暇じゃのう」

机の上のコーヒーカップは2つ

1つは空になっており、1つは半分までコーヒーが入っておる

仁「......」

1人はつまらんのう
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