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古きパートナー

第8章 サイカイ


レ「最近はよく思い出せているみたいだね」

『ええ、良い事はほとんどないですけど』

本当に良い事を思い出した事は少ない

唯一あったのは

孤児院から都美子さんと誠さんが引き取ってくれた事

優真と言う人物に会えた事

この2つしかない

レ「きっと良い事もこれから増えて行くわ」

『本当にでしょうか?』

レ「......」

僕が問いかけるとレインの顔は曇っていた

『......いえ、きっとあるでしょう』

レ「......ごめんね、これから思い出す事には良い事は本当に少ないの。むしろ希少価値って言っても過言ではないわ」

希少価値って

人の記憶を勝手に判別しないで欲しいかな

レ「でも、悪い記憶が多いほど良い記憶は他人の何倍にも良い事に感じるわよ」

『それ、フォローになっていませんよ』

でも、言われてみればそうだ

最悪な事があった頃こそ

普通の人が普通だと思う言動が新鮮に感じる

これは、間違っている事なのだろうか?

レ「もう少し思いだしたら次に行こうね」

『わかりました』

レ「じゃあ、今日はもう帰ったほうが良いわ。外まで行こう」

レインは笑顔で言う

僕はレインに言われるがままに図書館モドキの部屋を出る

『あ』

レ「ウフフ、驚いた?」

扉を開けると前と違った

最近は図書館で起きて帰るが当たり前だったから

外(?)に出るのは久しぶりだ

『増えたのですか?』

レ「氷月が頑張って思い出しているからだよ」

いつもは視界に2つ3つ入るのが当たり前だった

今となっては10は超えるくらい視界に入る

『でも、輝いていませんね』

レ「そうだね」

そのどれもが濁った輝きを放っている

『あれは、綺麗だ』

上の方に漂っている光は綺麗な輝きを放っていた

レ「ここで良い事を教えてあげる」

『なんですか?』

レインが悪戯っぽく笑った

レ「古い記憶は下の方に来るんだよ」

では、裏を返せば

新しい記憶は上に生まれる

レ「今、楽しいでしょ?」

『楽しいです。でも、真実を知ったら彼らも同じになる』

あの時と一緒になる

毎日が暴力で埋まる世界に

怖い

『?』

背中に少しの温もりが

僕の胸の前では細い腕が

レインが抱きしめているようだ

身長が届かないのか浮かんでいる

少しだけ安心したような気がする
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