第2章 全ての始まり
しばらく歩くと、前方に大きな屋敷が見えてくる。
桜はそれを見て驚き、歩き続ける赤司の背に目を移す。
「どうした?」
「い、いえ……。もしかして今から行くのは……」
「ああ、あそこだ」
案の定、返ってきたのは肯定の言葉だった。
少しして屋敷がはっきり見える所まで来ると、目の前に大きな門が聳(そび)え立っていた。
全体が黒色の細かい装飾の入った門には、小型カメラとセンサーのようなものがついていた。
「お、大きい……」
「そうかな? ほら、早く行くよ」
桜が感嘆の声を上げていると、門がゆっくり自動で開き始める。
彼女はそれに驚いていたが、赤司は特に気にすることもなく声を掛けて歩き出す。
「あっ、待ってくださいよっ」
桜は慌てて赤司の背を追い、大きな屋敷の中に足を踏み入れた。
門から始まった白い石の道は、途中でいくつかの道に分裂している。
白い道の周りには草木や花が丁寧に手入れされた状態で生えていた。
道の分岐点の中央には噴水とベンチも見える。
「豪邸……。って、あれっ!?」
桜の言葉にはそれしか出てこず、周りを見て小さく呟く。
ふと前を見ると、先程まであった赤司の姿が見えなくなっていた。
「えっ? うそ、もしかして……は、はぐれちゃったっ?」