第14章 媚薬
~帰り道~
「・・・」
私は家に帰る足をふと止め、今通ってきた道を振り返ってみた。
(カエデ…いきなりどうしたんだろう…?)
あの時のカエデは明らかに今まで接してきた優しくて明るいカエデではなかった。
(あの写真…なんだろう?)
私はさっき見た写真を思い浮かべる。
カエデに似た少女と綺麗なショートカットの女の人が写っていた。
(あの女の子…もしかして…)
私は思い浮かんだ考えをすぐに振り払う。
(そんなはずない。カエデの髪の色は緑。あの子の色とは違う)
でも頭の中でその考えは振り払おうとするほどだんだん強くなっていく。
あの子とカエデの顔はよく似ていた。
妹…にしてはだいぶカエデと歳が近い気がした。
それにいくら兄弟といってもあそこまで顔は似るものなのだろうか?
そもそもあの女性は誰だ?
カエデとはあまり似ていない気がしたがなんだか姉のような優しい雰囲気が漂っていた。
(…やめよう。カエデが話してくれるのを待とう)
私は踵を返し走って家に帰った。
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~家~
――ガチャ
「…ただいま」
私は玄関のドアを開けるとつぶやくように言った。
「あ!お帰り!望乃にいい話があるの!」
そういうと母は私に駆け寄ってきた。
「ほら!これ、見て」
手に持っていたスマホの画面を身を乗り出して見てみると昨日私が目を付けた記事と同じ記事だった。
「どう?望乃こういうの好きじゃなかったかしら?」
「…え?そんなこと言ったっけ?」
嫌いではないが特別好きというわけではない。
だがそもそもそんな話を母にしない。
「あら、そうだったかしら?でも素敵じゃない?やってみたら?」
(ただの口実か…)
さっき母が言ったことはただの口実。
本当は興味があるかどうかなんて母にとってはどうでもいいことなのだろう。
所詮、そんなものだ。
「望乃?どうかした?」
「え、あ…うん。ちょっとやってみるよ」
「そう!頑張ってね!」
私が返事をすると母は顔をパァッと明るくして元気よく笑った。
「じゃあ、さっそく準備するから…」
そう言って私は2階へと足を進めた。
母は「頑張ってねー!」と手を振っていたが、私は返事することなく2階へ駆け上がった。