第12章 本当の気持ち
私の親はお金しか目にない。
私のことなんてただのお金儲けの道具としか思っていない。
小学生低学年くらいの頃は母に抱きついてみたりした。
その度に心のこもっていない乾いた笑みを向けられた。
父は『お前は絵の才能がある。その才能をしっかりと実らせるんだよ』と私に度々言った。
とても嬉しかった。褒められたと思っていた。
だが本性は違かった。父は私の前では決して口には出さなかったが、母と話しているところを聞いてしまった。
『あの子、すっごく絵が上手よね。将来性あるかしら』
『あぁ、あれはいつか大物になるぞ』
私は嬉しくてたまらなかった。頑張ろうと、そう思った。
でも現実は非常にも私の心を踏みにじった。
『そうね、いつか画家にでもなって大稼ぎしてほしいわ』
『そうだな。でも早いうちに稼がないと全部あの子に持ってかれるぞ』
『なら今のうちにいろいろな絵を学ばせましょうか?』
『…?!』
小学生の頭でも分かった。
あの人たちにとっては私の絵の才能はただのお金稼ぎの道具。それ以外の何物でもない。
その後あの会話の証明とでも言うかのように私は絵教室に通わされた。
私は必死に嬉しそうな笑顔を見せた。
なぜか分からないけど、あの人たちの前で暗い顔をするのは負けた気がして嫌だった。
もちろん絵教室は楽しかった。
新しい世界が広がっていくようで面白かったし、上手に描けると賞に入る。その達成感が気持ち良かった。
でもその度に入る賞金などは全て親の手に渡った。
親は絵の道具や紙はそのお金でたくさん買ってくれた。
ある時、嫌で嫌で1度絵を一切書かない時期があった。
その日初めて父に殴られ、母に怒鳴られた。
いくら謝っても許してもらえず、筆を手に持ったらそれはピタリと止んだ。
その時決めた。
私の存在意義は『絵』
だから絵を描き続けると決めた。
今では少しだけお金を分けてもらえるようになった。
それでもあの人たちが私をお金儲けの道具と思っていることに変わりはない。
そんな人間の血は、今、私の中に流れている。
私も同じ、いずれそうなる。
いや、きっともうなっている。
私は、そんな人間。