第8章 死んじゃったら悲しむ人がいる
赤羽くんは私と同じようにあのクソ教師のせいで先生という存在を信用していなかったのだ。
理不尽なことを言うアイツに絶望した。
まぁ当然だろう。
そして、赤羽くんは世の中にも少し絶望を抱き始めていたのだという。
あの教師のように自分の利益のためのみに忠実な人間が世の中の大人のほとんどなのでは?と思い始めている。
実際半分以上正解だと思う。
私も同じ気持ちだ。
だが、烏間先生のような人を見るとその考えは揺らぐ。
でも赤羽くんはまだ烏間惟臣という人間をよく知らない。
だからまだ考えが揺らぐことなく、確信をもって話しているのだろう。
そして、赤羽くんの『腐った人間』というカテゴリ内には大人しか入っていない。
理由は『私』にあるそうだ。
それは中2の頃、私がバカな正義感でE組の先輩をA組の先輩からいじめられているのを助けた所を見たかららしい。
私はその先輩と何度か話したことがあった。
だからほっとけなかった。
思わず声を上げた。
『何してんですか!!』
『あぁ?んだてめぇ?』
『の、ののちゃん…』
『先輩!…なんでA組だからっていい気になってるんですか?E組だったらいじめれいいなんてルール誰が決めたんですか?』
『はぁ?てめぇこそいい気になってんじゃねぇぞ、後輩のくせによォ?正義の味方にでもなったつもりか?あぁ?』
『大体にして男が女をいじめるとか最低ですね。しかも自分よりも下の人間を見下して楽しむとは何とも滑稽で笑えますね』
『てめぇ…!ぶっ飛ばされてぇのかぁ?!』
―――バコッ!!
この出来事は良く覚えてる。
先生が通りかかってくれて、私『のみ』を助けてくれた。
今は決してそんなことをしてくれないだろう。
赤羽くんはたまたまそこを通りかかったそうだ。
その姿を見て赤羽くんは感動し、心ひかれたらしい。
なんだか照れくさい気がしたが悪い気はしなかった。
そして今日の一件で、完全に好きになってくれたらしい。
特に今日のは嬉しかったらしい。
赤羽くんは話終わるとにっこりと笑った。