第8章 失われた記憶
「ユリ......本当に俺らのこと、忘れちまったのか?」
「放して、なの。」_グイッ!
「っ!」
(っなんだ......今の力......)
ユリは宏光の手を振り払う。
そして宏光は異様な違和感を覚えた。
「......何であんなに腕力が......強くなってんだ?」
ユリのした仕草は一見軽く振り払うようなもの、
だが宏光はユリの力が軽く振り払う力ではなかったと感じた。
「......まさかユリちゃん、
人狼として覚醒し始めたのか?」
太輔は二人のやりとりを見て呟いた。
「ぇ、ガヤ......それどう言う......」
「......。」
複雑な表情で宏光を見る太輔。
「部屋に戻るの。」
再び歩き出すユリ。
「っおい待てよ!ユリ!」
ユリを追いかける宏光。
「っ待て北山!!」
「ちょっガヤ!?」
ユリを追いかけようとする宏光を止めようとする太輔。
「ぇ......?」
__ガッ!
「っ!」
「......。」
「「っ北山(ミツ)!!!」」
__ポタ...ポタ...ポタ......
「くっ......!」
宏光の肘下から手首にかけ、赤い雫がポタポタと床にこぼれ落ちていた......。
「......。」
「やっぱり、ユリちゃん......」
ユリの指を見てみれば長い爪が生えていた。
そしてのその爪の間からも赤い雫がこぼれ落ちていた。
「っ...ユリ......」
「......。」