第8章 失われた記憶
「お前が俺から、ユリを奪ったからだ......。」
宏光を睨みながら言う翔。
「っそんな理由で......
そんなくだらない理由でユリの記憶を消したのかよっ!」
「お前に何がわかるっ!」
「っ......!」
「お前は......お前は一夜にして俺から奪ったんだ。
俺は、お前が知っているずっと前からユリを知っている......
ユリを拾った、赤子の時から......」
「ぁ、赤子の時から......?」
「そうだ......12年間、俺達はずっと一緒だったんだ。」
「......けどユリは、2回も脱走したんだろ?アンタの元から......」
「......。」
「アンタは、ユリを傷つけるようなことをしたのか?
なら、お前のほうこそ......
ユリの家族になる資格ねぇだろ。」
「......。」
宏光の言葉に黙り込む翔。
「所長さんよ......ユリちゃんとアンタの間に一体何があったんだ?
5年前、彼女が脱走した理由は何なんだ?」
「......お前らに話すことなんてない。ユリ、部屋に戻ってなさい。」
「わかったの。」
ユリはさっき出てきた部屋に歩き出す。
「っユリ!」
_グイッ「っ!?」
咄嗟にユリの二の腕を掴む。