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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第4章 恨み憎む男ー灰崎ー


「怖くないよ」
 

「………本当に、ですか?」


「あぁ」


素直に答えると、彼女は驚いたように目を見開いた後、何故かすごく嬉しそうに笑った

…は、…何故

お前はこれから俺に吸い殺される運命だというのに


というか、自宅の裏庭から突如現れた怪しい少年に対して、警戒心というものがまったく感じられない

随分肝の据わった子供だ


「嬉しいです」


「…は、」


「私、そんな風に普通に話し掛けていただけたのは初めてです」


「……………」




無邪気な言葉に俺は返す言葉がなかった


なに?

こんな年頃の、なおかつ、そこそこ異性からの人気が高そうな顔立ちをしているというのに

普通に話し掛けられたのが初めて、だと?



「(…………ああ、)」


でも、少しだけわかった気がする


この顔立ちのせいで同性から嫌われているのか、それとも妬まれているのか


どちらにせよ彼女が同じ人間という世界の中で上手くやっていけてない事はよくわかった


「あの」


彼女が少し興奮気味に口を開く


血を吸ってさっさと帰ろうと思っていた俺は、完全に吸血のタイミングを失っていた


とりあえず呼び掛けに答える


「…何だ」


「名前を聞いていいですか?」


「………赤司、だが」


そうだ

俺の顔は知らないとしても
流石に名前くらいは知ってるだろう


と思ったが


「赤司さん、と仰るんですね」



彼女は俺の名前を聞いておののくどころか
更に嬉しそうに笑った


いや、それよりも、知らぬ間に自己紹介をしてしまっている自分が信じられなかった


…何をしてる、完全に相手のペースじゃないか

俺らしくもない


もうタイミングはどうでもいい
すぐにでも噛みついて血を吸おう


意を決して腕を伸ばそうとすると、
彼女はまたしても俺の予想に反して
自分から俺に駆け寄ってきた


思わず持ち上げかけた手も引っ込む


…この国では珍しい、俺と同じ髪の色


まるい月のような金色の瞳が優しく細められて、真っ直ぐに俺を見つめている


さらりと流れるように靡く長い髪からは仄かに花の香りがした



…僅かながらに、心臓が跳ねた


でも彼女はそんな俺に気付くこともなく笑顔のまま言った



「あの、もしよろしかったら私とお友達になっていただけませんか?」


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