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赤い吸血鬼と女の子 [黒子のバスケ]

第4章 恨み憎む男ー灰崎ー





今からちょうど10年前


その日も俺は人間を襲おうとして村に下りていった


血は好きではないが飲まないと喉は渇き、貧血にもなってしまう



吸血鬼は不便だ、なんて思いながらいつもとは少し違ったルートで森の中を歩いていた

それに深い意味はない




すると森を抜けた先に一軒の家があった


どうやら裏庭に出たらしい



きょろ、と辺りを見渡してみると、庭の中心辺りで花を眺めている少女を見つけた


俺……と同い年くらいだろうか



とりあえず喉も渇いていたし、今日の獲物はこの女でいい


そんな軽い気持ちでその少女に話し掛けたのだ




「おい」




声をかけるとその少女は花から顔を上げて
それからキョトンとして俺を見た




………なんだ?


いつもであれば俺の姿を見た瞬間にいなくなるはずなのだが

俺の顔はそれなりに知れ渡っているかと思っていたが、そうでもなかったらしい


ポカーンとしたままの少女に
俺はもう一度声をかけた



「…おい」


「………えっ、あ、はい」



ハッとしたように我に返ったその子は慌てて返事を返した


…へんな女だな




「お前は、この家の子供か?」


「はい、そうですけれど…」


「そうか」



…まぁ、どうでもいいが


とにかくさっさと血を吸って帰ろうと思ってその少女に近づいた



やはり俺を知らないのか彼女は逃げようとしない

…俺にとっては無駄な手が省けて好都合だ


だが、手が触れそうな距離まで来た時、彼女は思いもしなかったことを俺に聞いてきた




「…あの」


「何だ」


「…私が、怖くないんですか?」


「………は、」




恐る恐る聞いてくる少女に俺は思い切り素っ頓狂な声をあげた

俺らしくもない声がでる

思わず足も止まる



…何なんだ、こいつは
なにを言い出すかと思えば



誰ですか、ならまだわかるが
怖くないんですか、とは


どちらかと言えばそれは俺の台詞だろう


なぜ吸血鬼の俺がたかが人間の少女を怖れなくてはならない


意味がわからない



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