【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第3章 【リヴァイ】 You've Got A Mail
サクラと会うのは何日ぶりだろう。
近頃は、仕事が忙しくてなかなか二人の時間を取ることができない。
去年はほんの一週間だけという約束で出張に行ったが、結局なんだかんだで10日以上も帰ることができず、寂しい思いをさせてしまった。
休日出勤は当たり前の中、やっと早めに帰れる日が出来たと思ったら、奇しくもその日はバレンタイン。
花束を贈ろうと思ったが、まぁ、この鉢植えでも喜んでくれるだろう。
約束の場所に行くと、サクラは大きな木の下で椅子に座っていた。
向かい合わせに座ってるいるのは、痩身の美大生。
首から下げた画板に、一生懸命鉛筆を走らせている。
「サクラ」
「あ、リヴァイさん」
「何してる」
「私の絵を描いてみたいと言うので、お願いしているんです」
「ほう・・・」
よく、公園や路上などで見かける、似顔絵描きか。
描いている絵を見てみると、特徴をうまく捉えている。
ものの数分で、サクラの似顔絵が出来上がった。
「似てます?」
「ああ、見事なものだ」
二人で作品を見ていると、美大生が遠慮がちに口を開いた。
「あの・・・僕はずっとここにいるので、また来てください」
「・・・?」
「桜が咲く時期も、ここにいます」
桜の名所として知られる、この公園。
「何故か分からないんですけど・・・あなた方二人を見ていると、どうしてか桜の木を背景に描きたいと思うんです」
最初はサクラを描きたいと思った。
しかし、リヴァイと話す姿を見て、どうしてもこの二人を絵の中に収めなければならないと思った。
お互いに、見ず知らずの他人。
しかし、サクラもリヴァイも、何故か昔からこの美大生を知っているような気がした。
「分かった・・・じゃあ、桜が咲く頃、俺達の絵を頼む」
「はい!」
美大生は嬉しそうに、鉛筆を持つ手に力を込めていた。